登山時の食って??素人には未知の世界です。
国際観光学科で観光心理学や観光行動論を担当される幸田麻里子先生は、登山をすることがライフワークの一部です。そこで、登山をする人の一例として「食」について学生二人が登山と食について幸田先生にお話を聞きました。
Q.登山食について教えて下さい。
A.登山食は、持ち運びが大変なので「軽い物」であり、私の場合は「喉を通りやすい物」を選んでいます。例えば、手軽に栄養と水分を補給できるゼリー飲料をかつては好んでいましたが、重いので最近はあまり。今はデニッシュ(パサパサしないパン)、カップスープ等を選ぶことが多いです。登山でも日帰りでなく、テント泊する場合だと、食事のバランスは重視せず、「軽い物」や「気分が上がる物」、そして「ゴミが出ない物」を優先して選んでいます。具体的に挙げると、アルファ米を持参してすし飯の素でちらし寿司を作ったり、スープパスタを作ったりします。私のような一般登山者の登山食では「栄養バランス」以上に「荷物を軽くする」ことが重要です。その分、下山後は肉などの体に不足していると思われるガッツリしたものを食べたくなる欲求があり、そういった物を食べた後は味も普段より美味しく感じます。
Q.実際に登山する一日の流れを教えてください。
A.登山日は、朝4時には起床します。登山前に朝は、パンやおにぎりを食べます。登るエネルギーが必要なので。「山の天気は崩れやすい」という言葉は、登山をしない方でも聞いたことがあるかもしれませんが、山は夕方に差し掛かると天気が実際に崩れやすいです。そのため、午前中には登り始めます。夏は4時から登ることもあります。遅くても15時にはその日到達したいポイントまでゴールすることを心がけます。登る山にもよりますが、大体3~4時間から長い時は12時間ほど登山活動を続けます。間で休みすぎると体が疲れてしまうという理由から、休憩は30分か1時間あたり5~10分程度です。どんな運動でもウォーミングアップして心拍数をある程度上げるように登山活動中は疲労を軽減するため心拍数が上下するような波を作らないことが大切です。また大きな筋肉を使うと疲れやすいので、歩き方は小股で、水分はこまめに少量ずつ飲むことも心がけています。登山のために日常で行うトレーニングといえば、みなさんのイメージするような筋トレ、というものでなくストレッチを行い、足がつらないようにすることを重視しています。さらに、日常生活から積極的に歩いたり、移動の際に重い荷物をわざと担いだりして生活の中で体力向上を意識しているのがトレーニングに当たる行為かもしれません。
Q.先生、ズバリ登山の魅力とは?
A.登山の最大の魅力は、スポーツが苦手な人であっても、登山は歩き続けていれば必ず達成できるという点です。実際に私自身もスポーツはとても苦手で、幼いときには逆上がりを最後までできないような子どもでした。しかし、登山により成功体験を積み重ね、運動を積極的に行えるようになりました。登山を続けることで実際に体力が付きましたし、普段の生活が楽になりました。何より、色々なことが出来る自分に自信を持てるようになり、登山という運動習慣が根付いたことから体も心も健康になり、様々な恩恵を受けています。また、登山は非日常的な一種の旅行ですので、様々な場所に訪れ、いつもの生活の場所とは異なるところで過ごす良いきっかけになります。
Q.最後に先生のおすすめする国内の山は?
A.そうですね。初心者であれば龍ケ崎キャンパスのある茨城県県南地区にある筑波山がいいと思います。思った以上にバリエーションがあり、紅葉の時期はとても綺麗で景色を楽しむことができます。体力に自信のない初心者でもロープウェイがあるので疲れたら乗れますから、いいと思います。
他には、長野県の白馬岳(しろうまだけ)がお気に入りです。非日常という意味で夏でも「大雪渓」という雪を登ることができますし、頂上付近の花畑や稜線からの眺望など登山で景色を楽しみたい私にとって綺麗で癒されるという意味でおすすめです。
登山をすること、そこにも観光の醍醐味が凝縮されているな、と感じました。体育で運動スポーツが苦手だと感じた幸田先生が登山は楽しいと感じた点は、体育指導の現場での何らかのヒントが隠されているのではないでしょうか?さらに、下山後に「肉を食べたくなる」といった話が非常に印象に残りました。現代社会では、栄養バランスを意識して食べたい物ばかり食べることを注意し、バランスを考えて摂るという「食」が重視されますが、限られた物しか食べることができない登山をした後等、極限まで達した体が真に欲する物は、実は真に体に必要な物なのかもしれないな、と気づかされました。登山:スポーツ×ツーリズムは、他学にはない本学で経験できる特徴的な学びかもしれません。